皆さんが一度は見たことが有る「ネジ」その中でも今回は「多条ねじ」についてご紹介していきます。
「多条ねじ」という言葉はあまり聞き馴染みがありませんよね?
今回は私たちが日々製造している「多条ねじ」について、最前線で働いている私たちが解説していきますので、是非最後までご覧ください。
多条ねじとは
まず多条ねじとは下記のような形状をしています。
結論:多条ねじは、1回転あたりの進む量が条数に応じて増えるねじです。
そして、多条ねじには、このような外観の特徴があります。
1条ねじ:ネジの入り口がひとつ
多条ねじ:ネジの入り口が2つ以上
ネジの入り口が2つの物は2条ねじ、8つの物は8条ねじと呼称します。
通常の1条ねじと異なり、ねじ山が2本以上あるため、1回転で大きく進むことができます。
これにより、スピードが求められる機械や装置での使用に適しています。
たとえば、高速での位置決めが必要な装置や、効率的な物品の移動が求められる機構などで活躍します。
リードとピッチとは
ねじが1回転したときに、軸方向に進む距離を「リード」といい、ネジ山の間隔のことを「ピッチ」といいます。
1条ねじでは、リードとピッチは等しくなります。
リードに対するねじ1回転分の長さが作る角度を「リード角」といいます。
POINT
リード・・・1回転あたりに軸方向に進む距離
ピッチ・・・ネジ山の間隔
リード角・・・リードに対するねじ1回転分の長さが作る角度
一般に使われているねじ(1条ねじ)は、ピッチとリードが等しく1回転にネジのピッチ(ねじ山の間隔)分だけ進みます。
通常ねじは、1ピッチの間に1条のらせんがあることから1条ねじと呼ばれています。
2条ねじは、1ピッチ間に2条のらせんがあり、1回転で進む距離が2倍になります。
2条ねじは下図のように1ピッチ間に2本のらせん(赤と青)が1/2(半回転)づつあり、1回転するにはもう半回転必要となります。
1条ネジは1ピッチで1回転進み、2条ネジは1ピッチで半回転進むことが分かります、よって2条ねじが1回転するには2ピッチ必要となり1条ねじの2倍進みます。
3条ねじであれば1回転で3ピッチ必要となり1条ねじに比べ3倍進み、4条ねじであれば1回転で4ピッチ必要となり1条ねじに比べ4倍進むことになります。
POINT
1条ねじ: 1回転で1ピッチ分進む
2条ねじ: 1回転で2ピッチ分進む(1条ねじの2倍)
3条ねじ: 1回転で3ピッチ分進む(1条ねじの3倍)
4条ねじ: 1回転で4ピッチ分進む(1条ねじの4倍)
つまり1条ねじに比べ多条ねじは条数倍の距離、スピードで進むということができます。
多条ねじの加工方法
多条ねじの加工方法をご紹介します。
多条ねじを加工する方法は大きく分けて2種類あります。
NC旋盤を使った切削加工
転造盤を使った転造加工
以上の2種類です。
ヤマトではNC旋盤を使った切削加工を行っています。
おねじに関しては協力工場様にて転造されたネジ棒の材料を使用する場合もあります。
切削加工とは、「切って、削って加工する」ことを指します。
除去加工(削り取る加工)の一種で、金属や樹脂などの素材をNC旋盤を用いて削り、図面通りの形状を作る加工方法です。
転造加工とは、材料を削り取って加工する切削加工とは対象に、転造盤を使って材料に強い力を加えることで素材を変形させて成型加工をする方法です。
イメージとしては、粘土をイメージするとわかりやすいです。
粘土をヘラなどで切り落とすのが切削加工
粘土を手で握って成型するのが転造加工
切削加工やNC旋盤についての記事もありますので、参考にしてください▼
身近にある多条ねじについて
多条ねじは、少ない回転で多くの距離を移動する特性から、多くのねじが持つ、『締め付けて固定する』という役割よりは、『回転して移動する』用途に使われる事が多いです。
下の動画を見てください。
組立家具を作る時など、ボルトで部品を固定する場合、ボルト(おねじ)を回して締め付けていきますよね?
次の動画では、ボルトをその場で回転させてみます。
すると、ナット(めねじ)の方がボルト側に移動していきますね。
このような動きを利用して、モーター等の回転運動を直線運動に変換する送りねじ機構と呼ばれる仕組みは、高速で位置決めが必要な工作機械等に使われています。
多条ねじを使用した場合、同じ回転で条数倍の移動が可能です。
最近は家まで作ってしまう3Dプリンターや、UFOキャッチャーのアーム等も、この送り機構が使われている事が多いようです。
番外編:精密部品以外にも使われる多条ねじとは!?
さて、ここまで全く身近ではない多条ネジでしたが、会社や自宅を探ってみると、いくつかの多条ネジを見つける事ができました。
●ペットボトルの蓋
少ない回転で速く回る多条ネジの特性を活かして、ペットボトルの蓋にも使用されていました。
パッと開けてパッと閉じるので、何度も開け閉めする場合はストレスが減りますね!
なんと、色んなボトルの回転数を調べた方のブログがありました。
こちらによると、エビアンが3条ねじで最速のようです。
●お祭りで買った光るボトル
お祭りの屋台で子どもたちの心を鷲掴みにする電球ソーダ。
インスタ映えするこのボトル、何度も買わされますよね。
こちらは電球タイプではありませんが、蓋が2条ねじになっていました。
●お土産で頂いたポップコーンボトル
すでに中身は食べ尽くし、子どもが貯金箱として使用しているクマちゃんのボトル。
こちらの蓋が2条ねじです。
●おかずラー油
白いご飯にかけても良し!お豆腐にかけておつまみにするも良し!おかずラー油の瓶の蓋も多条ねじとなっていました。
こちらは4条となっており、わずかに回すだけで蓋が取れて、すぐに使えます!
本当はニンニク入りが好きですが、我が家ではニンニク無しを使用しています。
こうやって探してみると、意外とたくさんの多条ネジと生活している事がわかりますね。
皆さんも是非、身近な多条ネジ探しをしてみてください。
多条ねじを使うことのメリット・デメリット
さて、ここでは多条ねじのメリットについて紹介していきたいと思います。
【メリット】
・少ない回転で多くの距離を進むことができる。
1条ねじと多条ねじを比較した際に、耳にした際
「多条ねじのほうが回す回数が多くて大変そう…。」
と思われるかもしれません。
しかし、1条ねじに比べて多条ねじはn倍進むことができます!
「n条ねじ」のnに当たる数値が大きいほど、多くの距離を移動できるということです。
例えば・・・
1条ねじでピッチが1なら1回転で進む距離は1mm
4条ねじでピッチが1なら1回転で進む距離は4mm
8条ねじでピッチが1なら1回転で進む距離は8mm
というように条数が増えると1回転で進む距離も条数倍大きくなります。
【デメリット】
・締め付けることが苦手
多条ねじはピッチ(ネジ山の間隔)よりもリード(軸方向に進む距離)の方が大きいので、1条ネジと比べて、はリード角(リードに対するねじ1回転分の長さが作る角度)が大きくなります。
リード角が大きいと締め付け力は弱くなってしまいます。
・入手性が悪い
1条ネジの場合、汎用性が高くホームセンターにも売っていたり、特別な加工技術も必要ないので簡単に入手することが可能ですが、多条ねじの場合は使用用途が製品に特化している場合が多く、仕様も様々で簡単に入手することは難しいです。
また、加工について専門知識も必要となるため設備があれば加工ができるというわけでもありません。
多条ねじについてのまとめ
多条ねじの仕組みや、メリット・デメリットなどが簡単ではありますが、おわかりいただけたかと思います。
簡単にまとめると
1回転あたりの進む量が条数に応じて増えるねじ
高速で位置決めが必要な工作機械等に使われている
普段聞きなれない多条ねじですが、実は私たちの身近にはたくさん使われていて、場合によっては知らぬ間に使われている方もいるかと思います。
そんな条ネジですが、デメリットのひとつ”入手性が悪い”ことでお困りの方もいらっしゃるかと思います。
弊社株式会社ヤマトでは、NC旋盤を駆使し様々な多条ねじを加工した実績があります。
① 16条ねじまで対応!
② オスねじ+メスねじの組み合わせ加工可能!
③ 樹脂含む異なる素材の組み合わせ対応! (例:オスねじSUS303+メスねじPPS)
④ 切削により少量生産対応可能! (転造では型代が必要になりコスト高)
⑤ すべて社内一貫生産対応で、加工時間、コストダウン可能!
多条ねじでお困りの際は、ぜひ弊社株式会社ヤマトにご相談ください。