私たちの身近にあるプラスチックの製品がどのように加工されているかご存じですか?
実は成型機と呼ばれる設備を用いることで粒上の材料を様々な形に成型しています。
この記事では、射出成型を中心に、様々な成型方法や成型機の仕組みなどを解説いたします。
この記事でわかること
プラスチック成型時における様々な成型方法
実際の成型の流れ
プラスチックの材料を使った製品の応用例
加工時に発生する不良とその対策
プラスチック成形とは?
プラスチック成型の仕組み
プラスチック成形とは成型機と呼ばれる大型の設備を使用し、素材となるプラスチックを高温で溶かして型に流し込み、冷やして固め、製品を作る手法です。
用途や形状に合わせて各種材料特性を生かし適した方法で成形します。
プラスチック成型の簡単な流れ
プラスチック成形(樹脂成型とも言います)では、ペレット(材料)をホッパー(材料タンク)からシリンダーに投入し、内蔵されたスクリューが回転して押し出します。
スクリューにはヒーターが取り付けられており、スクリューを適切な温度に保つことで、材料が運ばれる過程で徐々にペレットが溶けていく仕組みです。
ノズル(先端)を金型に押し付け溶かしたペレットを流し込みます。
金型の中の樹脂が冷めるのを待ち、金型を開き成型品を取り出します。
射出成型のメリット
金型さえ作ってしまえば、ある程度の複雑な形状や微細な製品も生み出すことが可能です。
射出成形は高い圧力と精密な金型を使用するため、複雑な形状や細部までの詳細なデザインを実現できます。
射出成形では一度に複数の成形物を作成できるため、大量生産に適しています。
形状や条件にもよりますが不良発生率が他の工法と比較して一般的に少ないと言われています。
弊社には多くの射出成型機があります。
設備表がありますのでこちらもご覧ください。
様々な加工方法
押出成形
押出成形とは、材料を型枠に流し込んで圧力を加え、型枠の出口からところてんのように押し出すことで成形する加工法です。
製品のどこをカットしても、断面はすべて同じ形になります。
ブロー成形
製品は主に中空構造のものが多いです。
ブロー成形の特徴はペットボトルやパイプなどの中が中空の製品製造に使われる技法です。
ペレットを機内で溶かし、パイプ状にする。
このパイプ状の樹脂を金型で挟み、中に空気を吹き込み膨張させると外型に押し当てられて形ができ、冷却すると中空体の製品となります。
圧縮成形
圧縮成形はプラスチック成型法の中で最も古い成形法です。
熱硬化性プラスチックの基本の成形法です。
金型に圧縮成形に必要な成形材料を入れ、材料を金型内に充填させ更に加熱加圧を続け金型内で完全に硬化させて圧縮成形品を作ります。
お皿やどんぶり等の食器、服飾用ボタンなどの成形は、現在でも圧縮成形が使用されています。
真空成形
「真空成形」では、あらかじめ押出し成形した樹脂(プラスチック)のシート・フィルムを成形材料として用います。
加熱・可塑化した樹脂を金型の上に置き、樹脂と金型の間を真空状態にして、樹脂を金型に吸いつけることで成形します。
真空吸引と圧縮空気を併用する場合もあります。
金型は、雄型または雌型のどちらか片側で成形できるため比較的低コストで、少ロットの製造にも適しています。
卵のパックや食品トレーなど薄肉の樹脂容器などから、多彩な用途があります。
番外編:切削加工
弊社では多くのNC旋盤を設備しており、切削加工でプラスチックの精密加工が可能です。
切削加工の場合は丸棒からの削り出しとなります。
また金型が不要の為、金型製作のためのコストをカットすることができます。
あまり多くの数を必要としない場合は、切削加工の方がメリットがある場合がありますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。
切削加工、NC旋盤については下記の記事をご覧ください。
射出成形の流れ
(1)樹脂を溶かす
粒状の樹脂材(ぺレット)をホッパーに入れることでシリンダー内部へ送られ、そこからスクリューにより先端へ運ばれます。その際、シリンダー外部のヒーターで樹脂材が溶かされ射出装置先端に溜まっていきます。
POINT:
材質によって溶かす温度が重要
(2)金型に流し込み
シリンダーの先端のノズルを金型に押し付け、溶けた樹脂を流し込みます。
保圧しつつ金型内部を冷やし、樹脂が固まるのを待ちます。
POINT:
・樹脂を流し込む温度、速度、圧力が重要
・保圧の高低が重要
・温度と冷却時間が重要
(3)高い圧力をかけて製品を作る
金型が充分に冷え、プラスチック製品が十分に固まったら金型を開き完成したプラスチック製品を取り出します。
POINT:
(1)〜(3)の成形条件が揃った時品質の良い成形が可能
加工時に発生する不良とその対策
成形不良とは
成形不良とは成形品の「外観不良」「性能不良」などの不具合を指します。
樹脂の素材や粒度、射出成形時の速度や温度、湿度、圧力など様々な要因が成形不良の要因となります。
射出成形で「生産性向上」「コスト削減」を実現するためには不良率の削減が重要なテーマです。
微妙な違いや状況の変化によって様々な成形不良が発生します。
様々な成型不良の事例と原因
ショートショット(充填不足)
成形品の一部が欠ける成形不良
【想定される原因】成形機の能力不足、材料の流動性不足、ゲート断面積が小さい、成形品肉厚が薄い、ガス逃げ不良など
すり傷
成形品の側面などにこすれた跡がでる成形不良
【想定される原因】抜き勾配の不足、成形品の投出時の傾きなど
ばり
成形品に余計な膜がつく成形不良
【想定される原因】射出成形条件の不適正、金型の密着不足(型締力不足、型合わせの不良、金型のたわみ)など
ひけ
成形品の表面の一部がへこむ成形不良
【想定される原因】金型密着表面の冷却の遅れ
そり、曲がり、ねじれ
成形品の表面の一部がそりなどで変形する成形不良
【想定される原因】成形時の残留ひずみ、成形収縮率の見込み違い
割れ、クラック、白化
成形品の一部が割れたり、ヒビが入ったり、突出ピンの跡などが白く濁る成形不良
【想定される原因】金型の逆勾配、突き出し時の力のかけすぎや傾き、材料の水分残りを要因とする加水分解による強度不足
クレージング
放置しておいた成形品の表面に細かなひび割れが出る成形不良
【想定される原因】禍充填
ウェルドライン(ウェルドマーク)
金型内で溶融樹脂が合流した箇所に線状跡が発生する成形不良
【想定される原因】樹脂の溶融温度が低い、金型温度が低い、孔箇所が多い
※樹脂の流動解析次第ではウェルドラインの位置をコントロールできることもある。ただし、大きさが不均一な再生材利用などで樹脂の流れが均等に流れなくなるとコントロールは難しい
フローマーク
成形面の表面にゲートを中心とした波状の模様が発生する成形不良
【想定される原因】樹脂の溶融温度、金型の温度が低い
シルバーストリーク(銀条)
成形面の表面に銀白色のすじが発生する成形不良
【想定される原因】樹脂(ペレット)の予備乾燥不足
焼け、黒条
成形面に黒点や黒いすじが発生する成形不良
【想定される原因】射出圧力が強すぎる
気泡
成形面の肉厚部中央に孔が発生する成形不良
【想定される原因】金型密着表面の冷却の遅れ、材料の水分残り
ジェッティング
成形面のゲート箇所から蛇行した縞模様が発生する成形不良
【想定される原因】ゲートのサイズや位置、射出速度
ゆじわ
成形面のゲート付近にリンク状のシワが発生する成形不良
【想定される原因】ゲートのサイズや位置、射出速度
剥離
成形品が層状に重なり、雲母のように剥がれる成形不良
【想定される原因】成形条件が不適正、混ざり合わないプラスチック混入
脆弱
成形品の強度が不足している成形不良
【想定される原因】再生材の混入過多、予備乾燥不足、成形条件不良
離型不良
成形後、固定側の金型に成形品が貼りついてしまう。また、突き出しピンが成形品をつけ抜けたりする成形不良
【想定される原因】金型の抜き勾配が小さい、成形時の残圧が大きい、成形収縮率の見込違い、アンダーカットが大きすぎる
寸法不良
成形品が設計図面の寸法公差内から外れる成形不良
【想定される原因】成形収縮率の見込違い、予備乾燥不足、成形条件不良
黒点・白点・色むら・くもり
成形品に黒い点、透明成形品の白い点、有色成形品の色のくもりやむら
【想定される原因】再生材もしくは、輸送途中に発生する材料中の粉が原因
産業用プラスチックの応用
自動車業界におけるプラスチック成形
自動車業界では、樹脂成型が軽量化やコスト削減の鍵となっています。
車体部品、内装、エンジン部品などにプラスチック製の部品を使用することで、車両の総重量が軽減され、燃費向上に寄与します。
1台の車においてプラスチックの部品が占める割合は、車種にもよりますが約10%ほどになるそうです。
一般的な乗用車が1500kgとすると、およそ150Kgとなります。
また、成型技術の進化により、強度や耐久性を維持しつつ、複雑なデザインの実現が可能になりました。
この技術の進歩によって、よりエネルギー効率の高い自動車が製造され、環境負荷の低減にもつながっています。
電子機器業界における応用
電子機器業界では、樹脂成型が製品の軽量化、小型化、耐久性向上に貢献しています。
スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの外装や内部部品にプラスチックが使用され、衝撃吸収や絶縁性が求められる部品にも適用されます。
また、3Dプリンティング技術の進化により、カスタマイズ性の高い部品や試作品の迅速な製造が可能となり、製品開発のスピードが大幅に向上にも寄与しています。
その他の産業への貢献と将来展望
産業用プラスチックは、その軽量性、耐久性、耐腐食性、加工の容易さなどの特性から、建築および建設分野でも広く使用されています。
以下はいくつかの代表的な例です。
建築・建設
応用例: 配管材料、断熱材、窓枠、建築パネル
利点: 耐腐食性、軽量、高耐久性、断熱性能
1. パイプおよび配管システム
ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレン (PE)は、排水管や給水管、ガス管として使用されます。
これらのプラ スチックは腐食に強く、長寿命であるため、メンテナンスコストが低減します。
2. 絶縁材および断熱材
ポリスチレン(PS)やポリウレタン (PU)フォームは、断熱材として使用されます。
これらの材料は夏は熱くなりにくく、冬は冷えにくいといった性質であるため、冷暖房のエネルギー効率を向上させるために役立ちます。
3. 窓枠およびドアフレーム
PVCは窓枠やドアフレームの素材として広く使用されています。
アルミと同等の耐久性があり、メンテナンスが容易で、断熱性能が優れているため、エネルギー効率の高い建物に適しています。
4. 屋根材および防水シート
ポリカーボネート (PC)やPVCは、透明な屋根材や防水シートとして使用されます。
ポリカーボネートはアクリル樹脂の50倍と高い耐久性があり、透明度を持っているため温室や屋根ライトに適しています。
PVC防水シートはその耐久性から、漏水を防ぐためにも使用されま す。
5. 床材および壁材
ビニル床材(例: PVC製のタイルやシート)は、耐摩耗性と耐水性があり、商業施設や住宅に広く使用されます。
また、FRP(繊維強化プラスチック)パネルは、高強度で軽量、腐食に強く、壁材として使用されます。
6. 外壁材およびサイディング
サイディングは、軽量で耐久性が高く、塩害や冷害など耐候性にも優れています。
色あせしにくいため、メンテナンスが少なく済む外壁材として人気があります。
将来の展望
1.環境への配慮
バイオプラスチック: サトウキビやとうもろこしなどの植物由来の材料を使用し、環境負荷を低減。
2.スマート材料
応答性プラスチック: 温度や光に応答する材料で、がん治療への期待や医療デバイスやセンサーへの応用。
3.軽量化と強度の両立
高強度軽量材料:
新しい合成方法でより強く、軽いプラスチック材料が開発される見込み。
プラスチック成型のまとめ
非常に簡単ではありますが、プラスチック成型の仕組みや流れなどをご紹介しました。
産業用プラスチックは、今後もさまざまな分野での応用が広がり、技術の進展に伴い、さらなる性能向上と環境負荷の低減が期待されています。
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